遠近両用レンズと老眼(簡単解説)
前回、単焦点の価格差について説明しました。
今回は、累進多焦点レンズの価格差について説明していきたいと思います。
「累進多焦点レンズ」と言われても「?」な方が多いかと思います。
そのため、ここでは「遠近両用レンズ」という一番知れ渡っている呼び方で話を進めていきます。
遠近両用の価格差を説明する前に、老眼について説明していきます。
(価格差の秘密は次回にします)
接客をしていると「老眼」について間違った認識を持っている方が思いのほか多いように思います。そのため今回は前提となる部分を簡単に整理しておきたいと思います。
(もっともこのブログを読まれている方に、50代以上の方がいるかわかりません。40代以下の方は、後年の参考にして頂ければ良いかと思います)
「老眼とは」
遠近両用レンズすら知らない方もいるかもしれません。できるだけ簡単に解説します。
遠近両用レンズは、一枚のレンズの中で度数が変化するレンズのことを言います。
レンズの上の方が強い度数が入っていて、下に行くにしたがって度数が弱くなるレンズです。
では何故度数が変わるかというと(変わる必要があるかというと)
老眼のため近くが見えなくなった方に必要なレンズなのです。
老眼には全ての方がなる
40代になると老眼が自覚として現れてきます。
皆さん、老眼は聞いたことがあるかと思います。
老眼が進むと近くが見えなくなります。
老眼という字の通り、眼の老いです。
老いという響きのせいで老眼を頑なに認めたがらない方も珍しくありません。
ただ残念ながら老眼は皆さん平等に進みます。
筋肉、頭髪、肌…と全て衰えていきます。
中には鍛えているし、ケアを怠らないから若い時と変わらないと強がる方もいるかもしれません。ただ10代の時に今と同レベルのケアは必要なかったと思います。10代の時は何もしなくても、一日寝れば元通りになっていたと思います。
ただ筋肉は鍛えることができます。
実際50代の方でも一般的な10代の平均値を上回る方もいるかと思います。
ただ眼は、別問題です。
眼は、鍛えようがありません。(また鍛えているという方も見たことがありません)
こんなにも老眼で困っている方がいるのに、鍛える方法は見つかっていません。サプリやマッサージ等で「疲れ」を回復させる方法はあるようですが、老眼を和らげる根本的治療・鍛錬はありません。私の知らないところであるかもしれませんが、50代の方が10代の平均値を上回ることは絶対にありません。もっというと30代の方でも10代を上回れません。
そのため我々眼鏡士は、年齢が分かると老眼の具合が分かります。(逆に度数が分かると年齢が分かります。)個人差は若干ありますが、大きな差ではありません。
眼鏡を外せば見える方は老眼
50代以上の方でこういう方がいます。
「俺は老眼になっていない。近くを見るのに困っていない」
はっきり言います。
「嘘です!」
老眼にならない人はいません。
50代で老眼がない人はいません。
「老眼にならない」と言っている人は、
「俺は年を取らない」「俺は死なない」と言っているのと同じです。
少し痛い発言のように思いませんか。
このような妄言を言う方には、いくつかのパターンがあります。
① 「眼鏡を外せば問題なく見られるから老眼ではない」
これを言う方が思いの外多いですが、全く根拠になっていないのです。
少し冷静になって考えてほしいものです。
すでにこの発言自体が「私は老眼です」と言っているのです。しかも結構進んでいる状態です。
その方に聞きたいです。
「10代20代の時、近くを見るときに眼鏡を外しましたか?」と。
若い時に何もせずに見ることが出来たことが、今は外さなければ見ることが出来ないというのが老眼の証拠なのです。
② 「眼鏡をしなくても遠くも近くも不自由がない」
こういうことを言う方もいます。
これも半分嘘です。
半分とういうのは、本当は不自由がある見え方なのに本人が気にしていないだけなのです。
例えば遠くがしっかり見えていないのに、その視力を問題ないと思い込んでいる方に多いようです。普通の方は1.0が見えていないと遠くがぼけると感じます。ただ中には0.6ぐらいで問題ないと思っている方がいます。そのような方は、近くがある程度見えているので老眼でないと勘違いしているのです。
勿論本人が問題ないのであれば良いのですが、あなたは老眼です。
ちゃんと眼鏡で視力を矯正している方は、45歳ぐらいで近くが見え辛くなってきます。
老眼を自覚した時の対処方法
では老眼になったらどうすれば良いのか?
① 眼鏡の矯正度数を弱くする。視力を悪くする。
1.2程度見えるよう眼鏡を作っている方であれば、できるだけ弱くしてみてください。近くが見えるようになります。
「外せば見ることが出来る」という状態に近づけるのです。
日本人は、近視が多いと思います。
近視は決してネガティブなモノではない
近視の方は学生時代から「目が悪い」と言われてきたと思います。
ただ近視は遠くを見るのが苦手なだけで、近くを見るのは大得意なのです。
そのため近視の方は、同世代の方と同じ時間近業作業した場合、眼の良い方より疲れにくいのです。近視の方が眼鏡を作成するとき、度数を弱めに作成するのは得意分野を残すのが狙いなのです。
近視を完全に矯正したい方=極力遠くを見たい方は、眼鏡をすると遠くが良く見えます。ただ眼鏡をすることによって近視が消えてしまいます。結果、近視の得意分野が無くなってしまうのです。眼の良い方と同じ状態になります(なってしまうのです)。
そのため眼鏡の矯正を抑えることによって、得意分野を復活させるのです。遠くが今ほど見えなくても良いと言う方にとっては、効果的な方法かと思います。
ただこの方法も付け焼刃のような対応です。恐らく5年ぐらいしたら弱めの眼鏡をしても近くが見え辛くなってきます。理由は簡単です。老眼が進行してしまったのです。見辛くなったことによってさらに眼鏡の度数を弱くすると遠くが殆ど見えなくなります。眼鏡を掛ける意味が無くなってしまいます。
② 遠近両用レンズを掛ける
これが唯一の解決策と言って良いかと思います。
遠近両用レンズって良く聞くけどそもそも何?っ方も実は多いように感じます。
遠近両用を掛けると
眼鏡をしたまま遠くも近くも見ることが出来るレンズです。
50代以上の方で眼鏡をしたまま遠くも近くも見ることが出来ている方は、遠近両用を掛けていると思って良いかと思います。
遠近両用は、メカニズムを簡単に説明します。
度数が、上から下にかけて5段階から10段階程度変化します。一枚のレンズに複数の度数が入っているのです。
レンズの上の方には、1.2程度見える度数が入っていて、下の方は裸眼に近い度数が入っているのです。(一般的な近視の方で説明しています。)結果、眼鏡をしたままで「眼鏡を外した時の状態」が作られているのです。
遠近両用レンズを掛けた方が若々しい
遠近両用レンズは大変便利なレンズです。老眼が入っている全ての方にお勧めなレンズなのです。しかし遠近両用レンズに悪いイメージを持たれている方がいます。遠近両用レンズは、「年寄りの眼鏡」「老いを認めた」といったイメージを持っている方がいるのです。確かに45歳を過ぎた方が使用するレンズのため、そのようなイメージを持たれるのも無理はありません。
しかし遠近両用眼鏡を掛けないほうが、老いを感じさせることが意外と知られていません。
近視の方で遠近両用眼鏡を掛けないと、書類やスマートフォンを見るとき常に眼鏡を外さなければいけません。また目の良い方は老眼鏡を掛けなければいけません。老眼鏡を掛けると遠くは見えないため、眼鏡をずり下げて使用する方がいます。(東国原元宮崎県知事を思い出してみてください)。
これらの行為は、周りに老いをアピールしているようにしか見えません。遠近両用眼鏡は、外さずに見ることが出来るため、老眼特有の仕草をすることはありません。また遠近両用眼鏡そのものを見て、その眼鏡が遠近両用なのかわかりません。果たしてどちらが年寄り臭いのかお分かりいただけるかと思います。
番外:廃れた遠近両用レンズ
遠近商用レンズでいまだに勘違いしている方がいます。
未だに遠近両用レンズのことを、「レンズに線が入っているレンズ」と勘違いしている方がいます。線と言うか半円のようなもの(小玉といいます)のことです。レンズの下部にドラえもんのポケットのようなものが付いているレンズは確かに今もあります。
70代以上の方が使用している方が多いと思います。
このレンズは、人によっては便利なモノなのですが・・・
「見栄えが悪い」のと「現代社会に合わない」ため最近は、見かけることが少なくなりました。
「見栄えが悪い」
言葉の通りです。70代以上の方が使っているレンズな上に外観ですぐこのレンズだと分かります。おじいちゃん・おばあちゃんのように見えるため普通は敬遠されます。
「現代社会にあわない」
この小玉が付いたレンズは、2つの度数しか入りません。
(度数が二つ入っているため、バイフォーカルと言われています)
二つしか度数が入らないと弊害が生まれます。
「遠くを見るための度数」「パソコンを見るための度数」「近くの細かいものを見るための度数」が現代人は必要になります。2つしか入らないと、この大事な3つの全ての場面を網羅することはできません。「遠くは見える」「細かいモノは見える」ように作るとパソコンが見えません。現代社会、パソコンが見えない眼鏡は使い物になりません。
この二点のせいで60代以下の現役世代でバイフォーカルを掛けることは大変稀になっています。
ネガティブなことは何もありません。
遠近両用を皆さん掛けてください!
次回は遠近両用のレンズの価格差の真実について書いていきます。
ではまた後日