アランミクリの現在位置
アランミクリの今
たまたま二人の方から同じブランドについて質問を受けたので、予定になかったのですが今回はアランミクリ(alain mikli)について書いていきたいと思います。
アランミクリを知っている方も多いかと思います。90年代か00年代一世風靡した眼鏡ブランドです。ただ最近はあまり聞かれることのないブランドです。
このブログを書き始めるとき、アランミクリのことは完全に頭にありませんでした。完全に存在を忘れていたわけではありません。なぜなら東京に直営店が幾つもあるため、度々アランミクリをみかけるからです
今の眼鏡シーンを語ろうとしたとき、アランミクリのことは頭に浮かびませんでした。
しかし眼鏡の「歴史」を語ろうと考えとき、アランミクリは真っ先に思い浮かびます。
私の中でアランミクリは、「過去のブランド」だと捉えています。
アランミクリが眼鏡における功績は絶大で唯一無二の存在です。「ファッションとしての眼鏡」という新しいステージを切り開いたと言ってよいと思います。アランミクリが眼鏡の可能性を高め、10年いや20年歴史を早めたのです。
アランミクリの評価
「小さな魔法使い」様からの質問
フランスのアランミクリというブランドは、どう評価されていますか。 専門家のご意見を伺いたい。(お勧めできる眼鏡?お勧めできない眼鏡?)
(一部抜粋)
〈答え〉
簡単に言うと「アランミクリの歴史的評価は絶大だが、今は終わったブランド」というのが私の主観的感想です。
アランミクリの歴史的価値は、「見るため・見られるための眼鏡」というコンセプトのもと革新的で美しい眼鏡を世に送り出し、皆が知らない世界・価値観を提供したのです。それこそゼロの状態から一人で世界を作り上げた。こんな眼鏡ブランド今までありませんでしたし、これからも生まれないかもしれません。
そして革新的で挑戦的な眼鏡が、「ビジネス的にも成功した」ということも驚きです。
私の中でアランミクリの評価は何年も前に止まっていました。
そのためアランミクリの今を久しぶりに確認してみました。
感想は、予想以上に残念な今でした。
今のアランミクリに新しさ・驚きは全く感じられず、「昔あったな・・」という感慨深い懐かしさを感じました。復刻モデルが多いように感じました。
もちろんアランミクリが生み出したモデルの復刻なのでパクリではもちろんありません。
ただアランミクリの強みは、クリエーションであったはずです。常に世界を刺激し続けていたアランミクリはいなくなってしまったように感じます。
アランミクリについて調べて驚いたこと。
調べる前に推測していたこと
・日本での人気が熱狂的だった分、その反動で急速に人気が無くなった。
・市場が大きいアメリカ等でのビジネスに注力するために日本市場は軽視した。
・世界では依然と人気があり、ブランドの価値を維持している。
ただ調べれば調べるほど残念な事実が分かってきました。
上の推測は、全て裏切られました。
まずアランミクリのことを調べることが難しかった・・・
この情報化社会の中、ブランドの情報が手に入りにくいブランドってありますか?程度の差はありますが聞いたことがありません。あえてブランド価値を高めるために情報を制限しているのかな?とも思いましたが、そうでもなさそうでした。
なぜならINSTAGRAMを活用していました。
ただこのINSTAGRAMを見てさらに驚きました。
フォロワーが5508(2017年3月1日現在)。眼鏡ブランドは他のファッションブランドに比べれば影響力は低いですが、5000って少なすぎます。つまり世界のファショニスタは、アランミクリに興味がないのでしょう。一応念のために言いますが、アランミクリはファッションブランドです。通常ファッションブランドは、フォロワーが多いものです。
参考までに、MYKITA・・9万 OLIVER PEOPLES・・14.7万 CUTLER AND GROSS・・4万。
桁が違います
今でも人気があるのが日本。
また公式ホームページを見てまた驚きが、直営店が世界に15店舗あるようですが、その半分以上(9店舗)は日本です。
アランミクリの中で日本市場は大きなウェイトを占めています。
この事実から日本以上に世界では、終わったブランドとして認知されているのではないでしょうか?
ルックスオティカ買収後のミクリ
「ミクリばかり」様からの質問
ルックスオティカ傘下に入ってからの傾向について興味があります。近年は人気が衰えたせいか、以前より価格が抑えられて買いやすくなったと感じています。商品の殆どがイタリア製に変わっていることによるものなのでしょうか。
(一部抜粋)
〈答え〉
ミクリばかり様の指摘があった通りアランミクリは、5年程前にルックスオティカ傘下に入っています。その少し前にはイギリスの投資会社が経営に関わっていたようです。
ファッションブランドから停滞した高級ブランドへ
丁度そのころからミクリが変わった記憶があります。
ブランド力を高め、さらなる高級路線へ進んだように思います。
直営店もしくは特約店での販売を重視し始めます。そしてルクスオティカに買収されたあと直営店をさらに増やしていった覚えがあります。百貨店への出店が多かったように思います。
この展開の仕方がミクリの人気低下に拍車がかかったように思います。
百貨店に入ることで箔は付くのかもしれませんが、それがブランド価値・知名度を高めるとはいえません。百貨店の人気は下降線を辿っていた時代です。伊勢丹なら良かったのかもしれませんが、ミクリが入った百貨店は松屋、阪急と決してファッションに強いと言えない百貨店でした。
そもそもミクリは革新的で挑戦的なブランドだったはずです。それが旧来的な百貨店に力を入れるのはブランドが鈍化した証拠のように感じます。
実際、百貨店にあるファッションブランド中には、かつて人気はあったが「今は終わったブランド」が幾つかあると思います。皆さんも何個か思い出せるのではないでしょうか。ファッションを知らない富裕層に支えられているブランドです。
ただファッションブランドには、そのような終わった・終わりかけていたブランドが復活したブランドも多いかと思います。
よくあるパターンは、新しいデザイナーを招聘し劇的にブランドを変えることによって復活したブランドは多いかと思います。中には創業デザイナーが健在であっても強引なデザイナー交代を伴うことも珍しくありません。
アランミクリの場合は行われていません。
人気は低迷していてもコアなファンのおかげで売り上げは落ち込んでいないのか、代わりのデザイナーがいないのか、劇的な変更が行われた形跡はありません。変えない理由はわかりませんが、ミクリが過去のブランドとなってしまっているのは間違いがありません。
価格が抑えられる理由
価格を落とした、イタリア製に切り替えたというのは、やはりルクスオティカの傘下に入ったのが大きいと考えるのが普通かと思います。ただ人気が落ちて価格を下げるというより、利益が上がるバランスに価格を設定したと考えています。
コストを下げるために大規模な工場があるイタリアの大規模工場で製造をしたほうがコストをさげれます。(また私の憶測になりますが、中国製も交じっていてもおかしくありません。ルクスオティカは、中国工場のルートは間違いなく持っています。また組み立てさえイタリアで行えばイタリア製と名乗れるので純粋なるイタリア製でないかもしれません)
また過去の「売れる」名作の復刻を頻繁に行っています。
眼鏡製造において一番コストが掛かるのは金型作りです。
金型にコストが掛かるため一部のブランド・ショップオリジナルは、新作と言いつつ使用しているパーツは使いまわしの場合が多いです。
ミクリの凝ったデザインも以前の金型コストは既に回収済みのはずです。そのため価格を抑えることは可能だと思います。ただこの復刻モデルを多用する手法もアランミクリの存在意義を失わせる要因の一つかと思います。革新を忘れ安定を求めたファッションブランドが支持されるとは思えません。
アランミクリを勧められるか?
改めてアランミクリについて調べての私の結論
やはり昔のミクリには今見ても斬新で革新的な美しい眼鏡が多いです。
ただあくまで昔の作品であり今の眼鏡ではありません。新作を常にチェックした方が良いブランドではないかと思います。
どちらかというと90年代のファションを今のファッションに外しで取り入れる面白さ、古着(ヴィンテージ)をファッションに取り入れる感覚かと思います。ミクリが持つインパクトは、何年経っても色あせない眼鏡です。
どんな時代・ファッションになろうともアランミクリの独自性は忘れられないことでしょう。
ではまた後日